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内部での格付け作業は定量分析と定性分析の両方で行われるのが一般的ですが、独自のデータ分析だけでは不十分なので、複数の金融機関で過去の倒産データなどを共有して共通のデータベースを作り、内部格付け作業に利用しているケースもあります。
格付けに見合った金利とは信用リスクに見合った金利水準のことであり、倒産確率と回収率が分かれば計算できます。
しかし、立派なシステムを作ってもそれをビジネスに生かせるかどうかは別問題です。
倒産確率が高く、貸出金利を高く設定せざるを得ない相手には融資をせず、倒産確率の低い相手にだけ低利の貸出が集中するなら、何のための格付け機能でしょうか。
実際に貸出という取引に格付けが利用されても、これではあまり意味がありません。
本来、格付けに応じたリスク・プレミアムは一枚の図で示されます。
例えば二年間の貸出で相手がAAであれば○・三%、Aの相手には○・五%、BBBの相手には一%、BBであれば三・五%、Bには八%といったリスク・プレミアムが考えられます(これはリスクのない資産を買ったときに得られるリターンにいくら上乗せされるべきか、という数字です)。
社債市場が未だ発展途上にあり、格付けの低い相手にいくらで貸せばいいのか誰も自信がないからです。
これまでは、そうした相手からすべて担保を徴収していたから、悩むことはなかったのです。
金融機関はどういう理屈でどういう金利を課すのかを説明できなくてはいけません。
説明抜きで結論だけを述べても、借り手の理解は得られません。
1番大切な信用という看板を失った現在ではなおさらです。
銀行の資本家(株主)にとっても、このことは大きな意味があります。
銀行に説明能力がなく、適正金利を得られないというのであれば、そんな方です。
適正金利に関する説明能力の問題は極めて大切です。
いま、アカウンタビリティ(説明責任)という言葉がよく使われています。
これは政治の世界では政治家が、ビジネスの世界では社長やCEOがその活動に説明責任を負っているということです。
政治家は国民に、企業家は株主に対して責任を負っています。
古い体質の閉鎖的社会では少数の人間だけが知っていればいいという慣習がまだ残っていますが、現代の市場社会では通用しない考えでしよう。
他方、借り手の側は無担保の場合にどういう金利で借りることができるのかが分かりません。
いきなり新規の融資に一○%の金利を払いなさい、と貸し手から言われれば困るのは当然です。
金融機関が説明能力を欠いたまま自分が取りたい金利水準を相手に押し付けも、仮にそれがビジネスとして正しい金利水準であったとしても、世間は納得しないで適正金利という言葉が再三出てきました。
お金を貸すことの適正金利水準をどう考えるかは後で考えるとして、まず金利が一般的にマーケットでどういう形で表されるのか、プロのディーラーや機関投資家が売買を行う市場世界の金利像を探ってみることにしましよう。
ビジネスに資本を与える意味は全くないからです。
金融機関のコーポレート・ガバナンス(企業統治)という観点から、この点は重要です。
銀行がビジネスとして成立するかどうかというのは、政府系金融機関が必要か否かを議論する出発点です。
だから、格付けに応じた適正金利を銀行が得られるかどうかは、単に銀行経営だけでなく、国の金融システムの設計を考えるうえでも極めて重要なポイントであることがお分かりいただけるでしょう。
リスク・プレミアムリスク・フリー金利という概念があります。
これは読んで字の如くリスクのない商品に付される金利のことで、一般的には国が発行する短期証券が念頭に置かれています。
金融理論のテキストなどでは米国の短期財務省証券がその代表例として使われることが多く、日本の場合はそれと同様に短期国債が利用されます(現在は殆どゼロですが)。
そのリスク・フリー金利の世界に対して、一定のリスク・プレミアムを必要とするのが信用リスクの世界だと言っていいでしょう。
ただし、現実の金融取引においてはその取引期間に見合ったリスク・フリー金利を基準に置く必要があります。
一年以上といった長めの期間の取引に対して三カ月程度のリスク・フリー金利を使う訳にはいきません。
イールドカーブといって、金利の世界には期間に応じた金利水準が存在しているからです。
従って、二年の社債の金利とは、二年の国債金利にその発行者の信用リスクに応じたリスク・プレミアムが上乗せされた金利です。
リスク・プレミアムはリスク・フリー金利に上乗せされたものですので、信用リスクを表すグロスの金利とリスク・フリー金利との差という意味で、スプレッドと呼ばれることがあります。
ここでは意味を分かりやすくするためにリスク・プレミアムという言葉を使ってきましたが、実務的には、スプレッドという呼び名の方が一般的です。
ここで一つ大きな問題があります。
それは実際に市場で信用リスクのスプレッドを観察しようとすると、今まで話してきたようにリスク・フリーの国債金利をベースにするスプレッドと、LIBORあるいはTIBORを基準にするスプレッドの二つあることです。
前者の取引では○○○後者では○○○、といった表現をします。
信用リスクをリスク・フリー商品と比較するのですから国債の金利との差を用いる方が正しいのですが、銀行が世界の中心となる金融実務としてはLIBORという銀行にとっての調達コストを基準にするという方法を用いるケースも多くなっています。
これは、信用リスクの本質的な価格付けの尺度としては必ずしも正しくありません。
リスク・フリー金利とLlBORの差は、国と銀行の信用力の差です。
この差は本来的に経済環境や銀行の経営状態などによって激しく変動するものなのですが、日本では欧米市場のようにうまく裁定機能が働かないので、リスク・フリーとLIBORの金利水準がほぼ同じであったり、また逆転したりすることもしばしばあります。
結果的にリスク・フリー金利とLIBORの水準の区別が判然としないまま、社債市場での個別銘柄スプレッドも超優良銘柄は国債金利との対比で、それ以外の銘柄はLIBORとの比較で、といったやや中途半端な表示方法になっています。
そのためか、日本ではLIBORとのスプレッドをリスク・プレミアムとして称することもあるようですが、これは間違いです。
LIBORはあくまで銀行の調達コストであって、信用リスクのリスク・プレミアムを上乗せするベースではないからです。
一般的に言って、原価となる調達コストに上乗せするのはマージンですから、LIBORに乗せられたのは正確には銀行マージンと呼ばれるべきであり、リスク。
プレミアムではありません。
ではリスク・プレミアムとマージンはどう違うのでしょうか。
混乱を避けるために、反復しておきましょう。
リスク・フリー(国債)とLIBOR(銀行の調達コスト)と貸出金利の三つの金利体系を考えると、リスク・フリーと貸出金利との差がリスク・プレミアムです。
LIBORと貸出金利との差がマージンです。
前者は、倒産確率などのビジネス環境によって決まるべきもので、その結果として後者のマージンがプラスであれば金融機関に収益が生じます。
これが本来の金融ビジネス・メカニズムです。
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